――ガチャッ


「ただいま……」


玄関に、楓の靴は見当たらなかった。


楓、居ないんだ……。


……あたし、本当に矛盾してる。

自分から突き放したクセに、どうしてこんなに苦しくなるの?


重い気持ちを抱えながらあたしはリビングのドアを開けた。


テーブルに鞄を置いた時、紙切れのようなものが目に入った。


「なに、これ……」


テーブルにあったそれを見て、あたしは言葉を失った。


『穂香、しばらく距離をおこう。俺のことは心配すんなよ?』


それは、綺麗な字で書いてあるあたし宛ての手紙。



突然、どうして……

楓はどこにいったの?


もしかして、愛チャンのところ……?


楓と愛チャンが笑い合っている姿を想像して、胸が痛んだ。


楓と愛チャンはどういう関係なの……?


もう、頭の中がぐちゃぐちゃで……。


瞬間、楓の笑顔が浮かんで

やがて……消えた。


ブーブーブー


ブレザーのポケットの中で携帯が震えた。


楓だと思って急いで取り出したけど、電話をかけてきたのは楓ではなかった。


誰だろう……?


不思議に思いながらも、あたしは電話に出た。