不便? そうでもないけど。かばんもその方が軽いし、これなら隣の席の女の子と話すきっかけになる。

えぇと。髪の長い子で、確かな名前は。

忘れてる……、としても。


「バスじゃないの? 松宮くんは」

「九月はまだ走れるからねー。寒くなったら、すぐバスに換えるよ。寒いのダメなんだよ」


 冬がにくいと言わんばかりに、松宮くんは眉をしかめた。この分だと、ちょっとの度合いは、かなり小さそう。

「乗ってかない? 最後の坂道。マッハで降りるの気持ちいいぞう」

「えぇっ、いいよ」


「ほんとに気持ちいいんだよー」