「城くん、照明落として。部長、準備できたよねぇ?」


 照明という言葉を私が聞いたとたんに、教室中の電気がいっぺんに消えた。驚いて振り向くと、城くんが教室の入り口でスイッチに手をかけてる。


 別に真っ暗になったわけじゃないんだから、そんなに驚かなくてもいいのに、私はそれくらい驚いていた。

こんなことにいちいちこんなにびくびくしてたら、すぐに心臓に負担がかかり過ぎて死んでしまう、きっと。いいかげんにしないと、もう。


 世界はまだ昼間。時間としては二時を過ぎたばかり。夜になるには地球を回らなくちゃ、こっちが。


 落ち着け落ち着け、なんて言い聞かせて顔を上げると、美術室には人が一人増えていた。

人、だと思っていいと思うんだけど、もしかしたら違うかもと思ってしまうくらい、変わった格好の人だった。