ウェルカムアワーズ

 それで二人の呼びかけに応えて窓の側を離れた女の子は、名札を見ると『平坂依子』。

月見ちゃんが横から解説を入れる。よりこ、で安易によーちゃん、なんだって。


「よろしく、桜田さん。葉月ちゃんだよね」


 私の立場で言うのもなんだけど、平坂さんは、少しはにかむような笑い方で、そう挨拶をしてくれて、それで私はなんとなく、やっと。

ほっと息がつけたような気持ちになった。


「しっかし、言うねぇ、よーちゃん」

「私たちのなーにが不満なのよー」


「不安でしょー、普通。どんな短い時間だって、なんか悪いコト吹き込まれそうだもん」


 そのやりとりの中で、だんだん、気持ちが楽になっていくのが、自分で良くわかった。

ほぐれていくとか、溶けていくとか、そういう風に、いいように。