そんなお願いは口に出して伝えなくちゃ、誰にだって届かない。私はそのまま箱に突っ伏して寝てしまい、体が痛くて目を覚ましたのは午前一時のことだった。
それから制服をハンガーにかけて、ベッドに倒れ込んで眠って、現在に至る。
昨日のあれは、なんだったんだろう、なんていう疑問にたどり着くには、時間がかかり過ぎている。
今日はまず、坂本さんに昨日のことを謝って、松宮くんに会ったら、――会ったらなにをするんだっけ?
んー。頭、しっかりしない。あんなところで寝てただけのことはある。
「おハヨぉ、葉月」
名指しの挨拶に顔を上げると、さえこちゃんが目の前の壁にもたれて立っていた。私に手を上げて見せると、ゆらりと壁から離れる。さえこちゃんこそ実は幽霊なのでは。