ウェルカムアワーズ

 だから幸せな気持ちだったのに、長く続けることができなかった。松宮くんが見た方向に、私も目を動かすと、中庭の木の向こう側から、揺れるマントがのぞいていた。

「しつこいなぁ。アドベンチャーロマンですか、校内で」


 ちっとも怒ってない声で、いつもみたいな言い方をした。それから、廊下の柵を飛び越える。こんな時に私は右手の包帯に気がついていた。

忘れてた、私。自分のせいの怪我なのに、全然忘れてた、そんなこと。目に入ってなかったわけじゃないのに。

「どうせならロマンシングストーンってことで財宝つけてくれていーんだけど。とか言って、出てくるわけもないけどね」


そして正面を向いて、

「出てきてもヤダな」


草の上に立ち、余裕たっぷりにゆっくりと、松宮くんは『それ』と向かい合った。