ウェルカムアワーズ

 こんな状況でそれを褒め称えられても喜んでいる余裕なんてなかった。

 こつんと音を立てて、一歩分私たちに近づいてくる。カタイ靴の足音。


「はい、こっち」

二歩目の音を聞くより前に、松宮くんに強く引っ張られて走り出していた。引きずられているって言ってもいいくらいのスピードで、階段をかけ降りる。

自分の足の動きに、目がついていけなくなった。だけど移動してるんだから、きっと前に進めているんだろう、なんて、まるで他人の動きみたいに。自分のことなのに。


 説明したとおりに走ったみたいで、止まったところは渡り廊下の真ん中だった。私たちが出てきた方の校舎のドアが閉まってる。

きっと松宮くんが閉めたんだと思うんだけど、私はもう隣の人がなにをしたのかもわかんないくらいになっていた。