ウェルカムアワーズ

 本当になによりだと、私も思った。だってもたもたしてるわけにはいかないと思う。ホンキであれから逃げようと思ったら、ホンキで走らなくちゃ。

いくら松宮くんが見かけによらず体力バカだとしたって、私を背負って『あれ』に勝てるとは思えない。

 『あれ』。


……松宮くんは、『あれ』から逃げよう、って言ってるんだよね?!  見えてるんだよね?

 確かめる暇はなかった。と言うよりも、必要がなくなった。松宮くんに手を引かれて方向を変えた私の前に、『あれ』はちゃんと姿を見せて、松宮くんが反応したからだ。


 もう一つ向こうの階段から上ってきたみたいで、廊下をこっちに進んでくる。誰の声もしないんだから、並んでいる教室の中は空っぽなんだろう。

みんな帰るの早すぎるよ。人がたくさんいたら、こんなの少しも怖くない、かもしれない、のに。