「あ、うぅん」

「三丁目で結構降りるからね。あそこの研究所勤めのおじさんの顔を覚えとくといいんだ」


おじさん……?

そんな事は、……頭にまるで……、関係ないじゃない、だって。


私はとんでもなく鈍くしか回らない頭で、一生懸命、目の前で笑っている人の名前を思い出そうとしている。

えーとー、昨日、いっぱいしゃべって案内をしてくれた、――あ、うん、そうだっ。松宮くん。うん。

忘れるなよ、こら。


「今日は新学期だから、講堂に集まって勉学に励む立場を再確認するわけなんだけど、先に教室で出欠とるから。終わるのは昼前かな。余計なことを校長が思い付かなければ。校長には会ってるよね。あの人、食器道楽でさ、集めるだけじゃなくて最近は陶芸部とて作ったりしてね。旧館の小講堂使って、あ、あっちの端の一角だけど」