ウェルカムアワーズ

 レコードが転がり出している。ステージの後ろの棚から降りて、……自分の意志で勝手に降りて、ころころと転がってる。全部で五枚。ころころころと、階段を『のぼって』。

 誰も悲鳴をあげなかった。みんな静かにその動きを見守っていた。その五枚が、教室の後ろの壁にぶつかり、そこに横たわって止まるまで、とても静かなまま。


「発言は許可するよ。語ったら?」

「なんでおまえの許可が必要なんだ、オレに」


「なんか言えって言ってんのよ」

「なんか、ねぇ」


 鎮魂のための音楽を除き、静まり返った教室で、隣に立った女の子とのそんなやりとりの後に話し出したのは、さっき月見ちゃんの質問に応えた男子だった。

フルートを手に持ったまま、レコード盤がのぼった真ん中の階段を下りていく。足音が響く。革靴だから。