ウェルカムアワーズ

「液体?」

 遠くて良く見えないけど、その子の振り回す金のフルートから、滴が床に落ちていた。妙な、色をしている。赤のような、ムラサキ?


 その時、ふっと視界が暗くなった。一瞬、自分が貧血を起こして倒れたのかと思ったけど、そんなんじゃない。そっちの方が良かったのに。倒れちゃって良かったのに。

「停電、だよね?」


 誰かが確認するみたいにそんなことを言った。教室全体が、オカシな空気になっているように感じるのは、きっと私の気持ちの方面の問題なんだ。

別にふつうだ、私たちは。

そうだよね?! 月見ちゃんっ。


 その月見ちゃんは私の横で、ヘッドフォンを耳に当てていた。なんで。