ウェルカムアワーズ

「あれ、なんの騒ぎ?」

「ヘンデルが、笑った、ってあの人が悲鳴あげて、それで」


「笑ったぁ?」

 月見ちゃんの耳元のスピーカーから、音が漏れて聞こえてる。こんなボリュームで聴いていたから、ヨシトくんの声が聞こえなかったんだ。

それで、こんな音で聴いてたのに、私に聞こえたあの声は聞こえていない。聞こえてたら、こんな平然としているはず、ないもん。

私だけに? 私だけになんであんなこと? 理由……、理由なんてわかってるけど!


「ぎゃっ、なにコレっ」

 今度は教室の後ろの方で、声がした。月見ちゃんが立ち上がる。今度は、今度はなによ?!


「もちょっと女の子っぽく驚けない? さぁちゃん」

「だって、私のフルートからなんかみょーな液体がっ」