「人を座敷わらしみたいに言わないで下さいよ」

「そんなかわいいもんかよ」

「かわいい生徒になにを言うんですか」


「とっとと行きな。ぬらりひょんによろしくな。悪魔くん」

「名作をごっちゃにしないでくれって言ってるのに。わかってないんだから、先生は。行こ行こ、桜田さん」

「毒されんなよ、桜田」


 毒。そんな言葉は似合わない相手だと思った。『松宮隆一朗』と名札が教えてくれる彼は、制服を制服図鑑のイラストのように着ている。

真っ白なシャツに、きっちりとネクタイ。どの辺りがいったいどうして、悪魔くん?


 先に立って歩いて行く頭を、私は上目遣いで見つめていた。学校に来ている理由がなんだろうと、マイナス領域なはずはない。

補習だの補講だの追試だの、そんな単語とこの人は、関係ない。こんな見るからに頭の良さげな人は、本当に頭がいいに違いないのだから。