ウェルカムアワーズ

 私はヨシトくんの見たものを否定し、私の聴いたものも、否定してる。一緒に力いっぱい否定している。そんなもの、認めるわけにいかないから。

起こるはずのないものは、起こるはずはない。起こらない起こらない。だからこれは空耳に決まってる。聞こえたような気がするだけで、ほんとは私は聞いていない――。

 急いで頭から外したヘッドフォンを、私の右手が握りしめていた。怪力を発揮して、こんなモノ、粉々に砕いてしまえたらいいのに! 

そう考えてすぐに後悔する。そんなことだって、起こるはずのないことじゃない。もういや。なにもかもすべてみんなイヤ。


「どしたの、葉月。なにしてんの」

 私を見上げる月見ちゃんは、今、ヘッドフォンをずらしていた。今……、ってことは。