「だるまさんが転んだみたいで、なんか怖くなくない?」
「あんた、ちょっと根詰めすぎなんじゃないの? ヨシト。一応の授業なんだから、一人でピアノ使うべきじゃないでしょ。だから錯乱して幻覚見ちゃうんだわ」
ピアノからヨシトくんの距離、二メートルくらい。ステージの上で背中が壁にぶつかるまで、ヨシトくんは後ずさっていた。
彼の指差す先には、愉快な鬘をつけたヘンデルさんとかの肖像画がある。笑った? まさか。なに言ってんの、ヨシトくん。
そんな彼を見下ろして冷たいまなざしで説教しているのは、腰に手を当てた雪見ちゃん。
今まで彼を取り巻いて、うっとりと彼の演奏に聞き惚れていた女の子たちは、きっぱりと敵に回っている。ピアノを弾かないヨシトくんは、人気者ではないのだろーか。
「あんた、ちょっと根詰めすぎなんじゃないの? ヨシト。一応の授業なんだから、一人でピアノ使うべきじゃないでしょ。だから錯乱して幻覚見ちゃうんだわ」
ピアノからヨシトくんの距離、二メートルくらい。ステージの上で背中が壁にぶつかるまで、ヨシトくんは後ずさっていた。
彼の指差す先には、愉快な鬘をつけたヘンデルさんとかの肖像画がある。笑った? まさか。なに言ってんの、ヨシトくん。
そんな彼を見下ろして冷たいまなざしで説教しているのは、腰に手を当てた雪見ちゃん。
今まで彼を取り巻いて、うっとりと彼の演奏に聞き惚れていた女の子たちは、きっぱりと敵に回っている。ピアノを弾かないヨシトくんは、人気者ではないのだろーか。

