「次、音楽室で私たち急ぐのよ。じゃあねん」

「あー、忙しい忙しいっ。ほら、急ぐ急ぐ」


 両側から腕を押さえられて、刑事に連行される犯人のような状態で、私はドアに向かって歩かされていた。月見ちゃん、に雪見ちゃん。たぶん右が雪見ちゃん? 違う?

「雪見ちゃーん」


「なに」

「音楽の教科書」


「あ、そか」

 袋の中から一冊取り出して、松宮くんは、私の左腕を放して戻っていった雪見ちゃんにそれを手渡した。


……間違ってた、私。左だったんだ。