ウェルカムアワーズ

「教科書運ぶの手伝うよ。どーせ教室には戻るわけだし。隣だし」

 私の胸に広がるダークな雲は、その笑顔に吹き飛ばされた。これを、父上と並べたことを、とっとと後悔する。

同じ本を読んでいたとしたとこで、松宮くんはあんなじゃない。


 花見さんが指を差したカウンターの右に、中くらいのサイズの紙袋がふたっつ並んでいた。それを一つずつ持ち上げたところで、

「運んどいて、隆一朗。机の上に載せときゃいいから」


「葉月、そんなのもおろしなさい。置いてきゃいいの。どーせ運ばせるなら全部持たせてしかるべきよ」

 カウンターの向こう側から、跳び出すみたいに雪見ちゃんたちが現れた。び。びっくり箱みたいだった、今。びっくりした。びっくり――、え?