背中を向けた松宮くんに、巻いた栗色の髪を揺らして、その女の人はとびついた。って言うよりも、とびかかって首に腕をかけた。もっと言うなら、襲いかかったとでも。
私は少しも動けなかった。だっていろんなことがわかんない。まさか本気で殺されかけているわけじゃない。そんなまさか、こんなとこで。
それでも半分くらいは本気なのかもなんて考えてたから、話し出してくれたときには、ほっとした。ふざけてるだけ、……だって思っていいと思う。たぶん。
「ちょっと色仕掛けよ、おちなさいよ、隆一朗っ」
「そんなささいな見返りでこんな仕事をやれって言うかな。放してよ、はなみさん」
「あんた、私の腕をなんだと思ってるの。本なんて持てるわけないじゃないの」
私は少しも動けなかった。だっていろんなことがわかんない。まさか本気で殺されかけているわけじゃない。そんなまさか、こんなとこで。
それでも半分くらいは本気なのかもなんて考えてたから、話し出してくれたときには、ほっとした。ふざけてるだけ、……だって思っていいと思う。たぶん。
「ちょっと色仕掛けよ、おちなさいよ、隆一朗っ」
「そんなささいな見返りでこんな仕事をやれって言うかな。放してよ、はなみさん」
「あんた、私の腕をなんだと思ってるの。本なんて持てるわけないじゃないの」

