ウェルカムアワーズ

 ぐるぐるの螺旋階段は、校舎の色に合わせてあるのか、赤く塗られていた。

踏むと金属の音がする。触った手には、鉄の匂いも。学校の階段としては狭い。非常用、かも。

そんなことを考えていたら、少しだけスペースの広い踊り場で、松宮くんが立ち止まった。


「小学校なんだけど、見えるかな。天気がいいと見える富士山のよーな、……あ、おっけー。あの赤いのが、付属の小学校。バスに乗らなくていいように、駅から徒歩十分ね」


 細い柵の向こうに、町が見えていた。

基本的には住宅地なんだ。高台だから遠くまで見渡せて、ちょっとした景色だった。


 赤い屋根なんてほかにはないから、町並みの中にそれはぽっかりと浮かんで見えた。

その向こうに線路も見える。緑の多いところ。東京って言っても広くて、いろんな場所があるわけだ。

テレビだと、ビルばっかりな感じだったけど、こんなにやわらかい風景もある。