ウェルカムアワーズ

 前を行くよーちゃんが振り向いて初めて、私はそれが呼びかけだったとわかった。

『よー』。『ちゃん』すらも省略しちゃうのか。


 教室の入り口から、背の高い美人が体を半分はみ出させている。

その容貌には似合わないだらりとした格好だけど、きれいな人は何をしてもきれいだとでも言うのか、これは。


 ほんとにきれいで、通り越して怪しかった。ここで制服を着て学校にいるのが、変な感じ。だけどその雑誌モデルみたいな美人は、現役の高校生らしい言葉を口にした。


「お昼どうする? 今、購買行くけど、買ってくる? 食堂行く?」

「カギ、取ってこなくちゃなんないんだよ。今日は学食で食べよ。葉月ちゃんにルールの紹介もしたいんだ」


「おっけ。じゃ、後で。葉月ちゃんも」