隣の席の女の子の名前は、牧原さんだった。牧原沙里。

フルネームな名札が、ほんとにありがたい。刻み込んで、ちゃんと今度は忘れないようにしよう。


「はーづきちゃん、次の時間なんだけどー」

 チャイムの音がまだ続いている中、副委員長さんは一生懸命私の席に近付こうとしながら言っていた。

間を阻んでいる男子を、かなり乱暴に押し退ける。そして彼から発せられた文句を聞きもせず、


「家庭科で被服室なんだ。移動だから、一緒に行こ。あ、なんにも持たなくていい。先生、プリント配るから、筆記用具だけで」


 そう言う副委員長・よーちゃんは、ベストのポケットにシャーペンを挿していて、それだけで手ぶらだった。それでいいのか。