「そろそろお時間です」


黒いロングジャケットを
羽織り誰が見ても一般市民ではないと
みてとれる若い男性が深く丁寧にお辞儀をする


「えっと…」


誰だろう?そう思っている
あたしの心を読んだように


顔を上げた男性は


「申し遅れました
私、本日凪紗様を王室までご案内いたします
王室第2執事の紫野 聡太郎と申します」


そう言って再び深く頭を下げた


あぁ手紙の…


「お前があの…っ」


紫野さんに詰め寄ろうとする知晴の服を掴む


「今反抗してどうすんの?」


横目で知晴を見るとギュッと
唇を噛みしめていた


別れるのが悲しくないわけじゃない


ただ…助けに行くと言ってくれた
知晴の言葉があるからあたしはそれを信じようと思う


「待ってるから。」


聞き取れなかったのか知晴が不思議そうな顔で
こちらに視線を向ける


「知晴のこと、待ってるから」


おぅ!と悲しそうに笑う知晴


あたしは笑顔で車に乗り込んだ