過去作品集○中編


「好きになったっていい」

そう言って優しく笑った吉見。
そんな彼を突き放したくなかった。

利用してるって、
最低だって、
そんなの解ってる。

だけど、吉見といると、誠の事を考えなくていいから……





『遅くなってごめん!!』

土曜の朝10時頃。
私と吉見は映画を見に行くため、目印になる駅前の噴水で待ち合わせする事にしてた。

だけど、吉見は10分の遅刻。

『楽しみで眠れなくて……』

子供かよ!って突っ込みたくなる。
確か遠足ん時も、楽しみにしすぎて2時間も早く来てたっけ。

今度は寝坊かい……

『お詫びに何か奢(オゴ)るよ』

『……え?』

『せっかくなら形のある物でね』

私、そんなに怒ってないのに……
い、いいのかな?

『じゃ、行きますか』

そう言って歩き出す吉見。

普段、学校で歩くより速度は遅め?
もしかして私の歩幅に合わせてくれてるとか?

そんな風にされたら、また吉見に甘えたくなるよ……


『で? 夏乃は何が欲しい?』

と突然、足を止める。

『何でもいいよ。 ちゃんと大事にしてくれる物なら』

『あ、ありがとう』

ってか、本気で奢るつもりなんだ。
参ったな。
欲しいものなんて、すぐに浮かばないよ。

『とりあえず…… アクセサリー見てもいい?』

お店に入れば一つくらい欲しい物あるだろう。
そんな思いで、傍に見えた雑貨とアクセサリーのお店に入った。