しかし、安心したのも束の間。 信也さんは、私をゆっくりと床に下ろすなり、 がばりと抱き付いてきた。 しばらくの間、事態が飲み込めずに、 私は呆然となっていた。 部員達も同じだった。 私が正気を取り戻したのは、 彼の力強過ぎる抱擁が解けた時。 不器用に、いきなり重ねられた唇が、離れた瞬間だった。 静まり返る体育館。 誰もが目をむいて、ただ立ち尽くしていた。