「い、今は○○駅の前」


『近っ!それ俺の家の最寄り駅なんですけど!』


知ってます。

むしろ、あなたの家に向かっているから当然なんだけど。


『あ、そっか、俺んち来るんだもんね』


「う、うん」


すっかり相手のペースに巻き込まれたまま、私はただ頷くことしかできない。


『あ、これって1回切らないと近付いて来られないの? だったら切らないとダメだよね?』


……近付いてこいと言ってるように聞こえるんだけれど。


「えっと、大丈夫、です。ちゃんと、近づけますから」


『そ? じゃあこのままちょっと話していようよ』


素直に思う。



この人、変な人だ。



駅前からとぼとぼと歩きながら、私は生まれて初めての長電話をする。