愛おしい人が近くにいるのに、何も望まないということはできない。

でもその一言はとても重くて、大事だ。

だからその言葉さえあれば、これから気持ちを抑えることができそうだと思った。

「…もう二度と、俺に好きだと言わないつもりか?」

「どうでしょうね? 実際言われてみないと、次の行動がどう出るか、自分でも分かりません」

「あのなぁ~。…あ~! もう良い! 俺は帰る!」

「はい、お疲れ様でした。また明日」

「じゃな!」

彼は足音高く、部屋から出て行った。

…ヤレヤレ。

僕のことが嫌いならば、わざわざ2人っきりになることもないのに。

時は夕暮れ。

場所は都内にある高校。偏差値が高いことで有名だ。

その高校の生徒会室が、今、僕と彼がいた場所だった。

彼は生徒会長、僕は副会長だった。

彼は僕の世界を変えた人。

僕は成績は良かったものの、人付き合いが苦手だった。

だから仲の良い友達が1人もいなかった。

でも別にイジメられていたワケではない。

一定の距離を保って、友人関係は築いていた。

しかしある日、そんな平和な日常を彼が壊した。

彼は生徒会長の座を狙っていた。

そこで成績優秀者である僕に声をかけてきた。

「一緒に頂点、登らないか?」

と。

そして半ば強引に、彼の選挙活動を手伝うようになった。

彼は見事に会長の座についた。

そして僕は副会長に。

その頃にはもう、自覚していた。

彼に惹かれていく自分に。