当麻くんのお兄さんも、ご両親も、ここには来ないみたい。


お爺さんがずっとひとりでこのお店を切り盛りしている。


当麻くんのお父さんのお父さんだから、香純さんは当麻くんのお父さんの兄妹の子ってコトだよね?


「私ね、初孫なんだ。だからお爺ちゃんっ子なんだよ。この年になってもね」


って言って、香純さんはクスっと笑った。


笑うと目尻が下がって優しい表情になる所、当麻くんに似てるな。


――ガチャ。


そんなとき、部屋の扉が開いた。


見れば、当麻くんがやっと上がってきてくれた。


もう、遅い~。『すぐ行く』って言ったくせに。


少しニラむと、私がすねたのがわかったみたいで、当麻くんはニヤリと笑った。


「さや、遅くなってごめんな」


「別に~。香純さんとしゃべってたから、いーけどね」


香純さんを見ると、彼女も笑顔になっていた。