自室に帰り、蛍が入れてくれたコーヒーを啜りながら買ったばかりの地図を開く。
丁度子供が二人出かけていて助かった。
開いた地図は、自分の記憶にある世界とはやはり違っていて、だがどこか面影のある世界の形。

「…。」

この世界に来てから、読み書きは何となく出来るようになっていた。
いつ出来るようになったのかは自分も覚えていない。
ただいつの間にか出来るようになっていた、知識なんてものは所詮使用する頃には身に付けた日取りなど忘れてしまうのだ。
これがこの世界の住人と遜色なくなるまで上達する頃には苦労していた時代も忘れてしまうだろう、所詮苦労とはその程度のものなのだ。

…相変わらず自分の記憶と照らし合わせる作業は頭が痛くなる。
まぁ地図に表記されていた地名は殆ど自分の記憶とは異なるものだったが。

「…ん？」

世界地図を広げた時、何となく違和感を覚えた。
どこか不自然なのだ。
その不自然な箇所を見つけると、カミヤはリビングへと戻った。

「どうしたのカミヤ、勉強はもう終わり？」

「いや、これなんだけどさ…世界地図のここ、なんで切れてるの？」