神は過去にも、この惑星(わくせい)の王者として君臨(くんりん)した恐竜を、滅亡させた事例がある。サタンも神(しん)軍の一司令官として恐竜殲滅(せんめつ)戦に従軍し、恐竜軍を率いて決起した天使デーモンを破った。デーモンは十三天使中最も優秀な頭脳とパワーを兼備していた。だが多勢(たぜい)に無勢(ぶぜい)、最終的には敗残の身となり、五体をバラバラにされ、夫々(それぞれ)氷付けにされて、北極で永罰(えいばつ)の刑に処せられている。
 天使は神と同様、死没(しぼつ)しない。八つ裂きにされても、炎で炙(あぶ)られても存命(ぞんめい)している。体躯(く)を百の部分部分に解体し冷凍する、というのが謂(い)わば死刑に相当するのである。
 サタンはデーモンを、追想(ついそう)していた。恐竜撲滅(ぼくめつ)戦当時はデーモンを、全知全能の神に反逆する大罪(たいざい)者だと心底憎悪していたが、今次(こんじ)は違う。サタンは心境を吐露(とろ)した。
「嘗(かつ)て恐竜という種族が、宇内(うだい)を支配していた。恐竜は神を崇拝(すうはい)せず、知性も稀薄(きはく)だった。ただ動物の最たるもの、然(しか)も怪獣としか形容しようのない風体(ふうてい)だ。神は恐竜を忌嫌(いみきら)った。そして人間を、地球生物の頭目(とうもく)に選んだ。その時分(じぶん)地球は十三の天使によって治められていた。内デーモンという天使が、神の勝手な意向で殺生するのはおかしい、と異議(いぎ)を唱え、恐竜の味方をして神軍と交戦し、滅んだのだ。私は今その時、神軍の一員として参戦した過去を悔やんでいる」
「ではサタン様は今、デーモン様と同じ意志をお持ちなのですね?」
 サタンは、無言で点頭(てんとう)した。
「どうして愛しい我が子らを、全滅させられよう。超人の敵は私の敵。相手が何者であろうと、私は戦わずにはいられない」
「有り難う御座います」
 ゼノンは、感動している。
「君達は恐竜と違い、超能力を有している。天使の能力に、優るとも劣るまい。全超人を結集し、神軍を迎え撃とう。これは我々の生存を賭けた防衛戦だ。座して敗亡の時を待つ程愚かではないのだ、超人は」
「分かりました。早速全超人の招集(しょうしゅう)を指令(しれい)致します」