両者は、沈黙(ちんもく)している。
「何故、サタンは悪魔を造ったの?サタンがあんな怪物達を製造しなければ、こんな事にはならなかった」
「サタン様は、南極を生物(いきもの)の天地にしたかっただけだ。重要なのは、既に超人が南極に生存圏を営(いとな)んでいる、という事だ。超人の国を侵す権利など、誰にもない」
ビーナスはこれ以上、デーモンと論争したくなかった。息をつくと、
「貴方は全宇宙を相手に、勝てる自信があるの?」
と問質(といただ)した。その眦(まなじり)は、憂愁(ゆうしゅう)に満ちている。
「勝敗は問題ではない。私は今まで一度も、成否(せいひ)を見越(みこ)して行動した事はない。己の理念に適(かな)った生き方しかできないのだ、私は」
「そう。理念の為には、戦争も忌避(きひ)しない。その為に悲しむ者など、顧(かえり)みない。五十年前と全然変わってないのね」
ビーナスは恨(うら)めしそうな眼(まなこ)で、デーモンを見据(みす)えた。透明度の高い光波(こうは)が、デーモンには息苦しい。
「私は、こう言うと無神経だと思うだろうが、今でも君が好きだ。五十年前も愛していた。だが、だからといって自重(じちょう)はできない。私は本質的に、父上と相容(あいい)れない存在なのだろう」
デーモンとビーナスは宿命の重憲(ちょうけん)に、黙思(もくし)してしまっている。外は驟雨(しゅうう)だ。
それから三日後、デーモン軍はシドニーを目指して北上し、十日後にはシドニーを包囲(ほうい)した。
デーモンは敵将ネシアに降伏(こうふく)を勧告(かんこく)したが、ネシアは耳を貸さなかった。デーモン軍はシドニーを攻囲(こうい)し、二十日間の肉弾戦の果てに、神軍は投降(とうこう)を余儀(よぎ)なくされたのである。
「何故、サタンは悪魔を造ったの?サタンがあんな怪物達を製造しなければ、こんな事にはならなかった」
「サタン様は、南極を生物(いきもの)の天地にしたかっただけだ。重要なのは、既に超人が南極に生存圏を営(いとな)んでいる、という事だ。超人の国を侵す権利など、誰にもない」
ビーナスはこれ以上、デーモンと論争したくなかった。息をつくと、
「貴方は全宇宙を相手に、勝てる自信があるの?」
と問質(といただ)した。その眦(まなじり)は、憂愁(ゆうしゅう)に満ちている。
「勝敗は問題ではない。私は今まで一度も、成否(せいひ)を見越(みこ)して行動した事はない。己の理念に適(かな)った生き方しかできないのだ、私は」
「そう。理念の為には、戦争も忌避(きひ)しない。その為に悲しむ者など、顧(かえり)みない。五十年前と全然変わってないのね」
ビーナスは恨(うら)めしそうな眼(まなこ)で、デーモンを見据(みす)えた。透明度の高い光波(こうは)が、デーモンには息苦しい。
「私は、こう言うと無神経だと思うだろうが、今でも君が好きだ。五十年前も愛していた。だが、だからといって自重(じちょう)はできない。私は本質的に、父上と相容(あいい)れない存在なのだろう」
デーモンとビーナスは宿命の重憲(ちょうけん)に、黙思(もくし)してしまっている。外は驟雨(しゅうう)だ。
それから三日後、デーモン軍はシドニーを目指して北上し、十日後にはシドニーを包囲(ほうい)した。
デーモンは敵将ネシアに降伏(こうふく)を勧告(かんこく)したが、ネシアは耳を貸さなかった。デーモン軍はシドニーを攻囲(こうい)し、二十日間の肉弾戦の果てに、神軍は投降(とうこう)を余儀(よぎ)なくされたのである。


