「……は?」
「っつってもまだ6時前だし?夜じゃないけど」
ニヤリと効果音を立てそうな唇は、意外と分厚い。
いつの間にか急接近した顔はあまりにも美しくて、マツリはつい見惚れてしまいそうになる。
瞬間頭に広がるのは、天井の手前に彼が自分を見下ろす姿。
(口紅してない、のに、赤い、唇…)
それは、確かあの日の放課後マドンナの物だった唇で―――
「、ふっ!」
バシッ
乾いた音、そして靴の音。
カンカンカン
叩かれた頬は真っ赤な手形。
(ふっざけんな生意気生意気うざい)
マツリは唇を拭い、一人高い塔を睨み上げた。