ただならぬ背後の威圧感
に怯えながらも、少女は
恐る恐る振り返るとそこ
には見るからに屈強そう
な男が仁王立ちで悠然と
構えていた。
「――――いやぁ」
それを視界に入れるなり
少女はほぼ無意識に小さ
く悲鳴を上げた。
すると、守衛は残りの力
を振り絞り腰にあった無
線機を勢い良く男の足元
に投げつけた。
「お……お嬢様……には
手を出す……な」
「ジジイは黙ってろ!!」
しかしながら必死の抵抗
も虚しく、一方的に何度
となく蹴り飛ばされる痛
痛しいまでの守衛の姿と
最早鉄の塊となり果てた
無線機の末路に、少女は
泣きながら黙って見守る
ことしか出来なかった。
「よう、嬢ちゃん。アン
タがここの家の娘か?」
そうして、守衛が身動き
一つ取れなくなると男は
徐に少女へ近づき、まじ
まじと顔を覗き込んだ。
「――さんに……いで」
「あ?」
「守衛さんに、これ以上
乱暴しないで頂戴」
もはや嗚咽混じりにもか
かわらず、少女は碧色の
双眸と切なる要求を真っ
直ぐに男へと向けた。



