時は現代、丑三つ時。

既に街全体が不気味な程
に静まり返り、あらゆる
人々の営みは否応なく闇
に飲み込まれていった。

ところが、街の中心部に
位置する極めて高いビル
の一室からは僅かながら
も未だ淡い光が漏れる。




室内には木造の簡素な机
と二脚のパイプ椅子が佇
んでおり、その上に置か
れたスタンドライトはど
こか頼りなげにゆらゆら
と明かりを灯していた。

そのような状況で、実に
恰幅の宜しい中年男性は
椅子に体重を預けつつ向
かい側に座る少女をまじ
まじと見つめていた。




手入れの行き届いた艶や
かな蜜色の長い髪、意志
の強さと愛らしさを感じ
させる碧い双眸、綺麗に
縁取られた桜色の唇に透
き通るような真珠の肌。

たとえどの要素を並べた
としても、彼の薄暗い部
屋に似つかわしいとはお
よそ言えるはずがない。




――只一つ、紅に染まる
ブラウスさえ除けば――