僕は野球部に入って、毎日練習に明け暮れていた。

朝練とかもあって、一日中部活漬って感じ。

自然と、モモと一緒に登下校することもなくなっていた。
モモはいつも、同級生の女子と帰ったりしてる。



あれから彼氏は出来たのかな?
気になっていたけど、うちで聞いてもあんまり話してくれない。





ある日の日曜日、ちょっと遅くに起きてパジャマのまま下に降りていったら、家に知らない男の人がいた。

きっちりとスーツを着た、真面目そうな人。
その人と向かい合って、母さんとモモがなにか真剣に話していた。


階段越しにチラッと見て、なんかヤバそうだなと思い自分の部屋に戻った。

誰なんだろう?
そう思いながら、顔を洗って着替えを済ます頃、モモが上にあがってきた。

自分の部屋に戻ろうとするモモに声をかける。

「ねえ、さっきの人誰?」



ちょっとめんどくさそうに、芸能プロダクションの人だよって教えてくれた。
モモをスカウトにきたんだとか・・・

「レンは部活ばっかで知らなかったかもだけど、最近あんな感じの人、よく来るんだよ。
私、芸能界なんて興味ないのにな・・・」


へえそうなんだって答えたら、そういえば僕もそんな事あったなって、この前のジイさんを思い出した。


「僕もこの前、父さんの事務所の会長さんから、レッスン受けないかって誘われたよ。」


モモは新鮮に驚いて、話しに食いついてくる。


「ええ!いいじゃん、父さんとこの事務所なら、すぐデビューさせてくれるんじゃない?
レンは意外とかっこいいんだから、そういうのやればいいのに。」

そしたら、私も自慢できるじゃんって、僕を差し置いて嬉しそうに言った。



「やだよ、そんなに目立つこと好きじゃないもん・・・
どうせ目立つなら、甲子園行ってプロの野球選手になりたいよ。そんでゆくゆくは大リーグも目指すんだ!」

モモに初めてそんなことを言ったら、レンには無理だよって笑われた。

「大リーガーは、みんな大きい人ばかりじゃん。
小さくてイケメンなら、父さんの事務所に入った方が人気出るのに。」


なんか頭にきて、これからもっとデカくなるから今に見てろよって、タンカを切って下に降りて行った。