街で見かけた時は徳山先生の隣にいた彼女は、もちろん制服なんて着ていなかったしとても大人っぽく見えたので、まさか高校生だなんて思いもしなかったのだ。


賑わう教室の中でひとりで頭を抱えていると、室内に担任の星先生が入ってきた。


星先生は30代前半の女の先生で、新婚ホヤホヤだ。


彼女は教室内を見渡すと


「倉本くんと吉澤さん、ちょっといい?」


と私と真司を呼び出した。


真司は窓際でクラスメイトと話をしていたようで、怪訝そうに星先生を見ている。


とりあえず「はい」と返事をして私が彼女の元へ行くと、続いて真司もやってきた。


「ちょっと2人に手伝ってほしいことがあって」


星先生はそう言いながら私たちを連れて教室から廊下へ出た。


「来年の修学旅行の実行委員をやってくれる人を探してるんだけど、2人にお願いしたいの。どうかな?」


星先生の提案は、私と真司を驚かせるものだった。


急すぎる。
それだけじゃなく、名指しでこうやって依頼されるのは珍しいことだ。


たいていはホームルームの時間などに、立候補者を募ったりするものなのだが今回は違うのだろうか。


「なんで俺達なの?」


面倒くさそうに真司が尋ねると、星先生はニコニコと笑みを浮かべて当然のように言った。


「だってあなたたち仲が良いし。倉本くんならクラスを盛り上げてくれそうだし」


「先生、無理だって。俺もこいつも部活で忙しいんだから。な?おはぎ」


やりたくないというオーラ全開で、真司は私に同意を求めてくる。