呆気にとられている私と芦屋先生の目の前で、女子生徒が不機嫌そうに
「信じられない」
と言い捨てた。
私たちに文句を言っているらしい。
文句を言われるのはおかしいとは思うけれど、この時の私と芦屋先生はとにかく驚きの方がなによりも勝っていて、言葉が出てこなかった。
「芦屋先生」
徳山先生はさっきの驚いた表情をすぐにいつものクールな顔に戻し、芦屋先生に近づいた。
2人が並ぶと背が高い者同士で絵になる……、というこの状況ではありえないことを思ってしまった。
「秘密にしておいてくださいね」
そう言った徳山先生は、今度は私の方を向き
「君も、ね」
と念を押してきた。
無言でうなずく私と芦屋先生。
そんな私たちを廊下に取り残し、徳山先生と女子生徒はさっさと資料室から出ていなくなってしまった。