私たちはひとまず校舎に戻り、それぞれの玄関に向かうことにした。
教師と生徒とでは玄関が少し違う。
ちっぽけな明かりしかついていない廊下を歩きながら、芦屋先生に少し質問してみる。
「先生って電車で通ってるんですか?」
「いや、車だよ」
「この学校に来る前も先生してたの?」
「うん。デザイン系の専門学校の講師をしてたよ」
先生は質問すればなんでも答えてくれた。
彼女はいますか?
という質問をしてみたかったのに、さすがにそれは勇気がなくて聞けなかった。
校舎はやけに静かで、まだ職員室には先生たちも残っているだろうし、菊ちゃんみたいに部活のミーティングで残っている生徒もいるのだろうが、それを感じさせないくらい本当にシーンとしていた。
まるで私と芦屋先生しか校内にいないんじゃないかと錯覚してしまうくらいに。



