その後もしばらくグランドを走り続けて、もう日が沈みかけて薄暗くなってきた頃。


顧問の先生がクタクタになった私たちにようやくストップをかけてくれた。


今日はこの走り込みで部活のほとんどの時間を過ごしてしまったので、信じられないくらい体力を消耗してしまった。


野球部やサッカー部がグランドを整備したり道具を片付け始めている中、ふと渡り廊下に目を向ける。


芦屋先生の姿は、もう無かった。


そうだよね……。
いるわけないよね。


少しガッカリしながら弓道場に戻り、袴から制服に着替えた。


すると、菊ちゃんがまだ袴姿のままで私のところにやってきた。


「萩、今日は一緒に帰れないの~。ちょっとミーティングやることになっちゃって」


「あ、そうなんだ。大丈夫だよ。菊ちゃんも頑張ってね」


菊ちゃんは副部長だから、弓道部のミーティングには必ず参加しなくてはならない。
だからたまにこういう時があるのだ。


「ありがとう。じゃ明日ね」


ニコッと私に笑顔を向けてから、菊ちゃんが部室へ走っていく。


その後ろ姿を見送りながら、私はなんとなくもう一度さっきの渡り廊下に行ってみようと決めた。