私は先生と「また明日」と言葉を交わして、車を降りた。


地面に降り立ったのに、フワフワした雲の上にいるみたいで歩きづらくて。


走り去る先生の黒い車を見送ったあと、家までの短い距離がやけに長く感じた。


ドアを開けて家に入ると、なんと玄関にお父さんとお母さんが待ち構えていた。


「おかえり〜!どうだった?せ、ん、せ、い、と」


完全に冷やかすつもりで待っていたお母さんとは対照的に、お父さんはとても心配そうにこちらを見ていた。


「今日はもう……眠りたい」


それだけ言って、両親の間をすり抜けて覚束無い足取りで階段をのぼる。


下からお母さんの笑い声が聞こえたけれど、もう相手にする気も起きなかった。


自分の部屋に戻るなりベッドに倒れ込んだ私は、「うぅ〜っ」と唸りながら枕を抱える。


先生のことが好きすぎて、今日の出来事が嬉しすぎて、どうにかなりそうだった。


そして、あぁそうか、と納得する。