「納得してない顔だね」


私がふてくされているのに気づいた先生が、苦笑いしながらこちらをチラッと見てくる。


「いいんです。気にしないでください……」


可愛くない態度をとってはいけないと思えば思うほど、突き放すようなことを言ってしまう。


私ってこんなに素直じゃない性格だったかな。


バカバカ、自分のバカ。
と思いながら、先生に見えないように自分の頭を小突いた。


そうこうしているうちに私の家の近くまで来てしまい、２人きりの時間もこれで終わりになってしまった。


「すみませんでした……。ワガママ言ってしまって」


とりあえず謝って、シートベルトを外してさっさと車を降りようとした私の手を芦屋先生が掴む。


「誤解してるみたいだから念のため言わせてね」


「え？」


私が聞き返すか聞き返さないかのうちに、先生が私の唇をふさぐ。


久しぶりのキスは完全に不意打ちだった。


顔を離したあと、先生は私の手を掴んだまま笑みを浮かべた。


「一応、俺も男だから。泊まる時はちゃんと覚悟してもらわないと困るんだ。もう先生じゃないんだから。だからダメって言ったんだよ」


ものすごく近い距離で、ものすごいセリフを言われ、私の頭の中は一瞬にして真っ白になった。