気持ちを伝え合って、しばらく駐車場の車の中で話していた私たちはすっかり時間を忘れていた。
先生が時計を見て、ちょっと焦ったように
「ごめん、こんな時間まで引き止めて。そろそろ帰ろうか」
と車を再び発進させた。
まだ時間なんて大丈夫なのに。
もっと先生と一緒にいたいのに。
きっといつもみたいに「ご両親が心配するから」と言うのだろうな。
「先生」
夜の街を運転する先生に呼びかけ、ものは試しと思って尋ねてみた。
「今日、先生の家に泊まっちゃダメ?」
「泊まっ……、えっ!?」
先生は今までで1番驚いた顔をした。
信じられないくらい強い急ブレーキでも踏んでしまうんじゃないかと思うくらい驚いていた。
「な、何言ってるんだ。そんなのダメだよ」
「だって、先生と離れたくないんだもん」
「それでもダメ」
この呆れたような先生の言い方を聞くと、やっぱりダメかと少し落ち込んだ。
前に徳山先生の家に泊めてもらった時みたいに、ギュッと抱きしめてもらいながら眠りたかっただけ。
でもきっと先生はダメと言うだろうな、と予想はついていた。



