芦屋先生は少し車を走らせたところで、「ちゃんと目を見て話したいから」とコンビニの駐車場に車を停めた。
車や人の出入りが激しいコンビニの1番端っこのスペースに駐車してから、私たちはひと息つくようにお互いミルクティーとコーヒーを飲んだ。
カーステレオから私のよく知らない洋楽がかかっていたけれど、先生がその音楽のボリュームをとても控えめな音量に下げる。
少し沈黙が続いたあと、先生の焦げ茶色の瞳がしっかり私の目をとらえた。
「俺は君のことが好きです。もう一度、やり直してもらえませんか」
好き。
たしかに先生の唇が動いて、そう言った。
夢じゃないんだよね。
現実なんだよね。
ゆっくり首を縦に振る。
「今度こそ、君を大切にする」
私はまた同じように首を縦に振る。
「また、萩って呼んでもいい?」
先生の優しい声と表情が、私の周りを包んでくれるような感覚になる。
「はい……。よろしくお願いします」
と、先生に向かって頭を下げた。
そのままの状態で、必死に泣くのを堪らえる。
今までのことを思い出してなのか、感動からなのか、嬉しさからなのか、よく分からない涙がじわっと目にたまる。
「私も好きです。先生のことが大好きです」
「萩、顔上げて」
先生に言われた通りに顔を上げると、彼のとても嬉しそうな笑顔に出会った。
「ありがとう」
お礼を言いたいのは私の方なのに、先生に先に言われてしまった。



