「まずは、謝らせてほしい。これまでの1年を」
そう言った芦屋先生の顔が、対向車のライトに一瞬照らされる。
先生の横顔から読み取れる、複雑な感情。
申し訳なさそうで、悲しそうな顔。
「いつも気持ちを伝えてくれていたのに、何も言ってあげられなくてごめん。……本当に、ごめんね」
ごめんね、という言葉に込められた先生の想い。
私はその想いを今初めて感じた。
だってずっと先生は私と目を合わせてもくれなかったから。
だから想い続けているのは、もう私だけなんだと思っていた。
「何度も何度も自問自答して、やっぱり俺もきちんと気持ちを伝えようと思ったこともあった。……でも、どうしても出来なくて。君がちゃんと将来の目標を持って過ごしているのを知っていたからこそ、壊しちゃダメだって自分に言い聞かせてたんだ」
先生のひとつひとつの言葉が、強い孤独感ばかり感じていた私の心に響いて、そして温かくなっていく。
いつも先生は私のことを考えていてくれて、そして将来を見据えてくれていたのだ。
「たくさん傷つけてしまったから、ずっと謝りたかった。ごめん」
謝り続ける先生に、私はただ首を振った。
何か言おうとしても、喉のあたりに言葉が詰まってしまって出てきてくれない。
たぶん、口にしたら涙も出てしまうような気がした。
泣いちゃダメ、と自分を叱咤する。



