食事を済ませてお店を出て、コインパーキングに停めた車へ戻る。
車に乗り込む前に、先生が自動販売機で温かいペットボトルのミルクティーを買ってくれた。
先生は自分用にいつもの缶コーヒーを買っていた。
「少しドライブしようか。まだ時間は大丈夫?」
とシートベルトを締めながら先生に尋ねられて、私は腕時計で時間を確認することもせずにすぐにうなずいた。
「大丈夫です」
その頃、外はちらついていた雪が雨に変わったところだった。
雨がシトシト地面を濡らし、車のフロントガラスをにじませる。
動き出した車の規則的なワイパーの音を聞きながら、私は弓道の試合の時に必ずおこなう深呼吸をした。
そして意を決して口を開く。
「あの、先生!」
「あのさ」
と、私と先生の声が重なり、お互いに少しびっくりして目を合わせる。
まったく同じタイミングで同時に話し出そうとしていたことが分かり、先生が笑った。
「ごめん。でも今回は先に俺から言わせてくれないかな」
「は、はい……」
私がうなずいたのを確認して、先生は視線を前に戻した。



