こころ、ふわり



先生は学校からそのまま来たから、スーツ姿のままだった。


なかなか見られないスーツ姿を拝むように私は隅から隅まで見つめてしまった。


「何か変?」


芦屋先生が不思議そうに首をかしげたので、慌てて「全然変じゃないです」と返した。


かっこよくて見ていたとは死んでも言えない。


先生に促されて車に乗った私は、まだ夢見心地だった。


また先生の車に乗れるなんて。
嬉しくてたまらなかった。


「何か食べに行こうか。お腹空いてるでしょ」


先生にそう言われた途端、急にお腹が空いてきた。


「あっ」


と声を出した時には、すでに私のお腹からなんとも言えない音が鳴り響いた。


「あはは、変わってないね」


先生は大笑いしていた。


どうして私のお腹って、大事な時にグーグー鳴るのだろうか。
その場を和ませるというよりも、笑いを誘うので恥ずかしい。


それでも、こうやって先生の自然な笑顔がまた見れて、私の心はとても満たされていた。