こころ、ふわり



それから30分ほど経った頃。


芦屋先生から連絡が来たので、私はいそいそとリビングにいる両親に「いってきます」と声をかけた。


リビングからお母さんが私を冷やかすような言葉が聞こえてきたような気がしたけれど、聞こえないようにして家を出る。


外は日が沈みかけていて、辺りは薄暗くなっていた。


寒かったのでマフラーに顔をうずめて、近くの待ち合わせ場所へ向かった。


そこには、久しぶりに見る先生の黒い車。


先生は運転席を降りて、外に出て待ってくれていた。


「先生!」


私が呼ぶと、先生はこちらを振り向いた。
すぐに申し訳なさそうに目を伏せる。


「ごめんね、遅くなって」


「い、いえ!」


落ち着いている様子の先生と、緊張まみれの私。


相変わらず年の差を感じずにはいられなかった。