お母さんは怒っているからかしつこくて、答えるまでネチネチとこうやって責められるのも嫌だったので、正直に
「私の好きな人なの」
と言った。
ゴホッと運転席からむせたような咳が聞こえる。
お父さんが動揺しているらしい。
「あら、そう」
お母さんはなんだか少しだけ嬉しそうに口元に笑みを浮かべると、
「敬語使ってたわね。お母さん分かっちゃったわよ。相手は先輩でしょ」
と得意げに詮索を始めた。
「ううん、先生」
「せっ、せっ、先生!?」
もうここまで来てしまえばすべて言ってしまえ、と思い切って隠さずに答えたものの、それは私の両親にとってはかなりの衝撃だったらしい。
お母さんが今までに無いくらい目を大きく見開いて、口をあんぐり開けたまま私を見ている。
同時にまた運転席からさっきよりも大きい咳が聞こえてきた。
お父さんの激しい動揺が伝わってきた。



