「今日の夜、会えないかな」
芦屋先生が言った言葉が、最初はよく飲み込めなかった。
ただ一言、「え?」と喉の奥から変な声で聞き返す自分の声が聞こえた。
「今日?夜?」
「いや、ダメならいいんだ。ごめん、急に」
「だ、だ、だ、ダメじゃないです!空いてます!会いたいです!」
身を引こうとする先生にしがみつくように、慌てて首を振って制止する。
明日の澪たちの結婚式の時に話をするつもりでいたし、まさか先生からこんなことを言われるとも思っていなかったので本当にびっくりしてしまった。
そして同時に嬉しさと不安が両方同時に押し寄せてくる。
そのうち、在校生が数人こちらへ向かって歩いてくるのが見えたからか、先生は小声で
「あとで連絡する」
とだけ私に言い残して行ってしまった。



