派手な吹奏楽部の音楽とともに、私たち卒業生が体育館へ入場する。


すでに保護者たちは席についていて、音楽に合わせて手を叩いたりしていた。


厳かな雰囲気の中、教頭先生の司会進行で卒業式が進んでいく。


先生たちは思い思いの服装に身を包んでいた。


女性陣はスーツ、袴、着物、シックなワンピースドレスなど、思い思いの服装をしている反面、男性陣は全員スーツだった。


私はすぐに先生たちの中にいる芦屋先生の姿を見つけた。


いつものくたびれたシャツではなく濃いグレーのスーツを着ている芦屋先生は、なんだか洗練されているような印象を受けて、とてもかっこよく見える。


スーツなのに先生はいつもの猫背で、そして遠くを見ているような涼しい顔をしていた。


先生の横顔を見ながら、2ヶ月前に澪に言われた言葉を思い出す。


「萩のことが好きだって、だから最後の試合だけは見ておきたいって言ってたんだよ」


本当に私のことをまだ好きでいてくれてるの?
私が好きだと言ったら今度は応えてくれるの?


去年、頑張って気持ちを伝えた時に応えてくれなかったのは、私をちゃんと卒業させるためだったの?


校長先生が話す壇上を静かに見つめている芦屋先生に、心の中で問いかけた。