弓道部と美術部なんてなんの接点もない。


私が芦屋先生と自然に話せるのは、美術の授業しかないのだ。


週に1回2時間だけ。


切ないけれど、それが現実。


「授業以外に話せるチャンスがあるといいね」


私は、気づかって声をかけてくれる菊ちゃんに感謝した。
やっぱり彼女に先生のことを打ち明けて良かった。


空を見上げるとすっかり日が暮れて真っ暗だ。


2人並んで駅まで歩いていると、突然菊ちゃんが驚いたように「あっ!」と声を上げた。


「ど、どうしたの!?」


こっちまで驚いてしまった。


「あれ!ほら、あれ見て!」


菊ちゃんはすっかり興奮した様子で指をさす。
彼女が指す方向を見るも、人混みしかない。


「え?どれ?何があるの?」


いったい菊ちゃんは何を私に見せたいのかよく分からなかった。